STORY:和泉絵美さん(大学教員) | ブリティッシュ・カウンシル日本創立60周年
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Hiroshi Yoda

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英国に魅せられて

現在は大学で留学を目指す学生たちのサポートを担当しています。おもに英語力や留学先で必要となる学術的なスキルの育成に携わっています。私自身の最初のイギリス体験は大学1年生のときの家族旅行ですね。美しい田園風景やアフタヌーンティーなど、いわゆる「綺麗なイギリス」の伝統文化にすっかり魅せられてしまって。興味を持ったというよりも、もうイギリスに夢中になったという状態でした。大学での4年間もイギリス留学を目標にして過ごしていましたね。大学2年生のときに語学研修で1カ月オックスフォードに滞在したのですが、その経験もとても楽しくて。やはり一生に一度はイギリスに住んでみたい、という思いを固めるきっかけになりました。

ブリティッシュ・カウンシルでの日々

その後、98年から99年にかけてマンチェスター工科大学大学院(UMIST)へ留学するのですが、そのために必要な資格がIELTS(アイエルツ)でした。当時、日本でIELTSのためのクラスがあるのはブリティッシュ・カウンシルだけでしたし、英国の公的な国際文化交流機関の英会話スクールがあると知って「ここしかない!」と。とにかく先生方が素晴らしかったですね。英語教育を専門的に学んだ方ばかりで、アカデミックな雰囲気のレッスンを通じてIELTS対策はもちろん、留学した後でも役立つ学術的な英語を学ぶことができました。最後の頃にはIELTSを受けるのが楽しみになるくらい、自信をつけながらリラックスして臨むことができたと思います。

スキルではなく、考え方を身につける

いま思うと、ブリティッシュ・カウンシルで学んだのは、表面的な語学のスキルではなく、考え方だったと思います。当時は型を習っているような感じで、とにかく先生に教わったままを書いていたのですが、それが知らない間に思考のトレーニングにもなっていたんですね。例えばアカデミックライティングでは、自分の考えを客観的かつ公平に表明することが求められます。確固たる根拠を示しながら文章を組み立てて展開していくことが大事なのですが、そのために欠かせないボキャブラリーなども徹底的に教えていただきました。現在、私は言語研究や教育に携わっていますが、あのときブリティッシュ・カウンシルで学んだことが、その基盤になっていると思います。

コーパスから現場へのフィードバック

UMISTではコーパス言語学を学びました。コーパスとは人間の言葉を集めたデータベースのこと。大規模なデータベースから、人間がどのように言葉を使っているのか、どんな特徴があるのかを統計的に導き出していきます。現在私が取り組んでいるのは「学習者コーパス」と呼ばれるもので、ネイティブスピーカーとは異なる語学学習者の特性を分析しています。日本で英語教育を受けた学習者が、どんな英語を操っているのか、どんな誤りをしやすいのかなどをコーパスから抽出して、英語学習の現場へのフィードバックするのが目的です。これまで講師の直感に頼ってきた部分を、客観的なデータを元に補うこともできますし、逆に直感では気づけなかったことがコーパスから分かったりもします。

留学を志す人へ

若いときに外の世界にふれるのは、自分の中に多様性を受け入れるスペースを作ることにつながると思います。外国で生活すると、それまで想像もしなかったような価値観に出会ったり、「これはありえない」ということが、そこでは当たり前だったりするんですね。最初は面食らうんですが、違いはあれど着地点は同じだったり、最後にはほどよく収まったりするのを目の当たりにすることができる。そうやって、自分が信じていたことだけが真実ではないと知る。見たことのない風景にふれることで、多様性を受け入れる力を身につける。それが留学することの価値なのではないかと思います。

和泉絵美にとって「UK」とは?

「最初の点」です。よく学生から「これをしたいんですけど、将来困らないですか?」と相談されるのですが、それに対しては「先のことはだれも分からないよ」と答えることにしています。たしかに先読みをすることも必要ですが、あまりリスクばかりを気にしていたら新しい世界に飛び込めない。私自身「イギリスが好き」「学びたいことがある」という気持ちだけで留学したので、ほとんど将来のことは考えてなかったんですね。おかげで少しは遠回りしたかもしれませんが、結果的に今の仕事にたどり着くことができた。その仕事というのが、自分にとっての最初の点だったブリティッシュ・カウンシルとの出会いや、イギリス留学の経験を伝えることで次の世代の人たちをサポートしていくことなので、本当に点と点のつながりなんだなと感じます。そのときどきで自分が本当にやりたいことに向き合って進んでいければ、いつかはそれがつながって、自分がいるべき場所や自分がやるべきことにめぐりあうことができる。そう信じているんです。

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Profile: 和泉絵美(いずみ・えみ) 

同志社大学 全学共通教養教育センター 准教授。大学2年次に1カ月の英語研修でオックスフォードに滞在。これをきっかけに、本格的な英国留学を目指してブリティッシュ・カウンシルの英会話スクールに通学、3年間であらゆるコースを受講。1998年~99年、英国マンチェスター工科大学大学院(UMIST)留学、コーパス言語学(大量の言語データから統計的に言葉の特徴を導き出す研究分野)を学ぶ。帰国後は、翻訳会社や情報通信会社にて言語データ研究に従事。2013年より現職。留学準備コースのコーディネーションおよび授業を担当。自らの留学経験に基づいて、留学や将来グローバルなフィールドで活動するために必要な英語能力の育成に携わっている。

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