令和6年度文部科学省委託事業 - 全国の英語教員対象
「教師の英語力・指導力向上のための実践的オンライン研修」第二次報告
約97%の研修修了者が「本研修の有用度」について「役立った」と回答
- 令和6年度文部科学省委託事業 - 全国の英語教員対象
- 「教師の英語力・指導力向上のための実践的オンライン研修」第二次(最終)報告
- 「話すこと(やり取り)」の指導に焦点を当てた研修
- 全修了要件を満たした受講者は約9割で、その97%が「自分に役立つ研修だった」と回答。授業実践のしやすさおよび実践後の生徒の変化を高く評価
英国の公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシル(日本事務所所在地:東京都新宿区 駐日代表:ジム・ブース)は、昨年度、文部科学省委託事業 「教師の英語力・指導力向上のための実践的オンライン研修」を実施しました。日本の中学校、高校の英語教師の現状やニーズを踏まえてブリティッシュ・カウンシルが開発したもので、発信力の強化、特に「話すこと(やり取り)」の指導に焦点を当てた10 時間のコースです。
研修コースは、ライブで参加するワークショップ(同時双方向型)*と、個人で取り組むセルフアクセス(eラーニング**)双方の特徴を効果的に組み合わせ、指導についての技術や知識の習得を支援し、授業改善を進めることを目的として実施され、定員を大幅に上回る応募者(中学校766名、高等学校706名)から選ばれた中学校教員400名、高等学校教員400名が参加しました。
(*ワークショップ=モジュール1、**eラーニング=モジュール2-4)
■受講者数・経験年数および修了者数
中学校400名、高等学校400名、合計800名が受講。教員経験としては、「5年未満」および「5‐10年未満」が中高それぞれ25%程度、「10-20年未満」が中学校36%、高校29%を占め、「20年以上」は中学校13%、高校22%と受講者の経験は多様でした。
受講者(途中辞退した者を除く)のうち、モジュール 1-4及び事後タスク1-4を修了した受講者は、中学校362名で全体の90.5%、高校は352名、88.0%。各モジュールにおいても94%以上(中高とも)が終了し、事後タスクはモジュール終了者の内97%が提出しました。(オンライン研修には様々な形があり、一般的なeラーニングの完了率が10%程度とされる中で、この完了率は非常に高い数値と言えます。)
■参加者のアンケート結果によるオンライン研修の総括
今回の研修修了者に「本研修の有用度」を尋ねたところ、「役立った」という回答は中高共に約97%という非常に高い結果となりました。参加者が「役立った」と感じた根拠については、研修前と後に行った8分野にわたる意識調査(参加者の普段の指導内容や意識等に関する調査)の回答結果にも表れており、全項目において評価が大きく改善しています。特に、『実践しやすい内容だった』という意見と、『良い振り返りの機会になり、意欲が上がった』という意見が多くみられました。 これは、「授業で直面する問題解決につながる」「授業で使えるアクティビティが得られる」といった教師の研修に対するニーズを満たした研修であったことを意味しています。
また、事前・事後調査結果において、特に、「授業中における教師の英語での発話の割合が50%以上」である割合は、中高ともに10%以上の伸びを示しました。受講前は中高とも全国平均(中学:68.4%、高校39.9%)以下でしたが、受講後は中学:66.8%、高校:50.6%となり、全国平均を上回りました。特にモジュール1のワークショップ後に、著しい増加に繋がりました。これは研修において、教師が使用する英語の質にも重点を置き、研修講師が具体的でわかりやすい英語の見本を示したことで教師の意欲が喚起されたと分析しています。この意欲は研修最後まで維持されたことになります。
また、実践内容や教師の指導における知識や自信について尋ねた項目においても数値は大きく上昇しました。「やり取り指導に必要な支援を提供する方法」について「理解がある」という回答が、中学校で事前40%が事後78%、高校は44%から77%と大きく向上しました。
■研修の概要
- 概要や特徴
研修コースは、ライブで参加するワークショップ(同時双方向型)と、個人で取り組むセルフアクセス(eラーニング)双方の特徴を効果的に組み合わせた内容となっており、指導についての技術や知識の習得を支援し、授業改善を進めることを目的として実施。なお、eラーニング教材は、ブリティッシュ・カウンシル初のAI動画を活用し開発した教材で、指導技術の手順や指示語などをわかりやすく紹介。
各モジュール(1~4)で学習したあと、研修で学んだ具体的・実践的な指導技術を実際に行う「事後タスク」に取り組むことで授業改善を進め、指導への自信を高める構成で、ライブワークショップ(モジュール1)での学習(中学:2024年6月、高校:2024年8月)を経た後、約半年(2024年9月末から2025年1月)をかけて各自eラーニング(モジュール2~4)で学習を継続しました。
- 研修時間
オンラインワークショップ(モジュール1)2時間への参加と、セルフアクセス(eラーニング)での学習(モジュール2~4)計8時間、合計10時間のコースを受講。
- 参加教員の感想
<中学校教員>
「全ての講義が実践的で、その日のうちに実際に授業に活かすことができる内容だったため、非常に有意義なものでした。授業で活用して練習することで自分の力になっていったのを感じました」
「新しい指導方法を知るとともに、自分の指導をふりかえって改善するいい機会になりました。これが終わりではなく、これからも生徒と一緒に学び続けたいという思いでいます」
「生徒の英語使用量がかなり伸びてきたと思います。実際の振り返りでもそのようにコメントを残す生徒が増えてきました」
<高等学校教員>
「今まで受けてきた研修の中でも、わかりやすく、真似して実践しやすかった。やっていることだけを模倣するのではなく、理論に従って実践することで、手応えを感じることもあった」
「大変勉強になりました。すでに授業中の指導に数多く取り入れさせてもらい、指導力の向上を実感しています」
「研修で学んだことを実践すると、生徒の反応に良い変化がありました。英語が苦手な生徒も英語を話すことは好きなので、意欲的に取り組む姿勢が見られた」
※詳細は、このページの下部にあります「令和6年度文部科学省委託事業 教師の英語力・指導力向上のための実践的オンライン研修 第二次(最終)報告書」をご覧ください。
■総括、今後の展望など
受講前にはスピーキング指導についての悩みを抱えていた受講者たちも、本研修を通して、「こうすればいいんだ!」という具体的で実効性の高い指導のノウハウを身に付け、それを使って授業改善を行うことで、生徒のやる気や英語力が高まるという経験をしました。これは「自分の指導が生徒によい成果をもたらした」という教師にとっての成功体験であり、自己効力感の向上を意味します。生徒の発信力強化においてAI活用が期待されていますが、指導の核が教師の指導力であることは揺らぎません。教師が教室でAIをうまく使いこなせるかどうかのカギは、「AIに任せたいタスクを自分でできるかどうか」です。今回の受講者は、指導の「なぜ」と「どのように」が会得でき、指導のプロセスや流れを構造的に捉えることが可能になりました。今後は生徒に合わせて、多様なアプローチを掘り下げて具体的な方法で使い分けることもできます。この確かな指導力はAIを活用する時においても必須技術であり、基盤です。
研修が「やりっぱなし」になることも多い中、本研修で多くの教師から授業改善についての確かな報告が寄せられた要因には、研修内容だけではなく、オンライン研修の特性等を踏まえ、研修方法や教材等にも科学的根拠(エビデンス)を採用し、日本における実効性を検証していることにあると確信しています。
本研修については、今年度の事業も6月の開始に向けて準備が進められており、募集がスタートしています。