By 英語教育支援チーム

2021年 06月 01日 15:18

こんにちは、英語教育支援チームのチヒロです。
前回に引き続き、教師だけでなく生徒も豊かに英語を使う授業、English Rich(イングリッシュ・リッチ)な授業を実現する条件の第2回です。ここでは、教師の英語の質に焦点を当てます。

条件その2:教師の英語を生徒の理解に合わせる

まず、教師の英語が生徒に通じることが大切です。そのため、教師が自分の英語を調節することから始めます。生徒の理解に合わせて英語を選択したり調節したりすることを「grading」と呼びます。

生徒の理解度に配慮し、どのような場面でどんな表現を使用するのが適当かを考えます。これは、生徒のレベルにあった語いや表現を選び、適切なスピードで話し、生徒が理解できる英語を使うということ。生徒が理解できる英語をたくさん提供することが、教室を英語が飛び交う空間にする第一歩です。

授業で英語を進めると、生徒の集中力やリスニング力の向上にも役立ちますが、理解できない音声を聞かされてもあまり意味はありません。例えば、電車やバスで多言語アナウンスが増えていますが、自分が触れたことがない言語の案内がされても、通常は聞き流しますから、学習にならないのと同じです。

逆に、スピードがゆっくり過ぎたり、簡単すぎるのもよくありません。生徒の上達に合わせて、教師は自分の英語を見直します。生徒が理解できる少し上ぐらいが理想です。

生徒が理解できる英語を使うと、次第に教師の使う英語をマネして発する姿が見られるようにもなります。シンプルな教室英語を使うと、「先生のようになれる!」という目標にもなります。

条件その3:段階に分けた、明瞭で簡潔な指示をする

次に、指示や説明をする時の指導テクニックをご紹介します。これは、言語活動の手順を説明する際、簡潔で必要なことだけを、わかりやすく、全員が理解できるような工夫です。これをStaged instructionsと呼びます。

これは簡単に見えて、実際には熟練が必要なスキルで、慣れるまではつい冗長で複雑な説明になりがちです。わかりやすい説明や指示をすることは、すべての教師にとって必要なスキルのひとつで、国際研究でも重要な指導技術として扱われています、

例えば、「第1に~をして、第2に~をして」というように、わかりやすく簡潔で、段階に分けて、必要なことだけを言うようにします。日本語で行うとしてもそう簡単ではないので、外国語となるとより一層の配慮が必要です。授業前にリハーサルをすることをお勧めします。

教師の指示が簡潔になれば、多くの生徒が短時間で理解できるようになります。そうすると、生徒が理解できたかどうかを確認するのに多くの時間は必要ないので、言語活動の時間を増やすことにもつながります。

条件その4:理解度を確認するための質問をする

では、教師が英語で行った言語活動の指示を、生徒が理解できたかどうかを確認するにはどうしたら良いでしょうか。この場合は、Instruction Checking Questions (ICQs) というテクニックが効果的です。

何かの説明や指示をした後、“Do you understand?”(わかりましたか)と聞くことがあります。しかし、これでは生徒がどの程度理解したかはわかりませんし、理解を助けることにもなりません。生徒にしたら、自分ではわかったつもりでも、実際はそうではなかったということがあります。また、部分的には理解したけれども、それがどこかは明確には言えないという場合もあります。そんな時でも、“Yes.”と返事することがあります。先生方は、やり始めてから質問がきたり、わからない生徒がいることがわかり、個別に説明をして回ったという経験はありませんか。また、関心がない時や集中していない時、指示を理解していないと認めたくない時もあります。逆に、“No.”という答えがきたとしても、同じようなことが起こります。

こういう場合には、Instruction checking questions (ICQs)を使います。これは、指示や説明を行った後に、ポイントを絞った簡潔な質問、例えば“What’s the first ~?”、“How many~?”  などを行って、与えた指示の重要点を確認していく手法です。生徒の理解度合いを確認できる上、教師は英語を使い続けることもできます。

ブリティッシュ・カウンシルの研修でICQsを学んだ教師からは、「とても便利で、もっと早くに知りたかった!」「英語を使い続けることができるし、授業が驚くほどスムーズに進む」という感想をよく聞きます。生徒にとっては、「先生の英語がわかった!」という実感につながり、モチベーションや自信が高まります。ICQsはCELTA(英語教授の国際資格)の実習では必修項目で、第二言語習得の分野では基本的な指導テクニックとしてよく知られています。

これと似たもので、内容面の理解を確認するConcept checking questions (CCQs)というテクニックもあります。

英語教師にはもちろん一定の英語力は必要ですが、ここで紹介した指導技術が生徒のやる気を引き出し、わかりやすい授業をするのにとても大切な役割を果たします。

次回は、生徒のモチベーションに配慮し、意味のあるコミュニケーション活動を行う、という点から、残り3つの条件について考えます。

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