By 英語教育支援チーム

2021年 07月 20日 16:00

ここまで、「使える英語」を身につけるために、ジャンルをめぐっていくつかの課題をお伝えしてきました。しかし、改善に向けた変化はすでに始まっています。(第1回第2回第3回

新しい授業が始まっている

2020年に改訂された新学習指導要領は、授業で英語を使う機会を豊富に設定し、情報や自分の考えなどを伝える力を育てようとしています。このため、言語活動を中心とした授業に重点をおいています。加えて、これからの授業については次のような記述が見られます。

  • 送る相手や目的などに応じて英文の表現形式が異なることに留意する
  • 言語活動では、自然なコミュニケーションを意識する
  • 文法はコミュニケーションを支えるものであることを念頭におく
  • 実際の言語の使用場面や言語の働きに十分配慮した題材を取り上げる

こういった視点は、テキストのジャンルを取り入れれば、容易に実践できることばかりです。授業で生徒たちが読んだり聞いたりする素材の例として、店内放送や駅のアナウンス、電話の録音メッセージ、電子メールやパンフレット、説明、討論、新聞記事、広告、報告文、インタビュー、ニュース、物語など、学習指導要領にはテキストのジャンルがたくさん例示されています。

すでに大学入試にも変化が

大学入試ではすでに変化が起こっています。2021年1月に実施された大学入学共通テストでは、好きなミュージシャンのファンクラブの案内、友達とのショートメール、旅行代理店のウェブサイトの「よくある質問」、スポーツにおける安全性について説明文など、多彩なジャンルや状況が見られました。なおかつ、共通テストの問題文は、「(問題を解いている)あなたが何をしたいのか」という目的を明確にしています。例えば、ファンクラブサイトに入会したいという目的で必要な情報を探す、大学の課題でスポーツの安全性についてのプレゼンを作成するなどです。

このような変化に対応するには、日々の授業で異なるジャンルを取り入れ、それぞれの特徴を考えてみたり、他のジャンルとの違いを分析したりする機会が大切です。ジャンル毎の特徴を知っていれば、英作文をする時に文構造や適切な語いを選ぶ手がかりになり、リーディングでは文構造の予測ができます。それは、「使える英語」や「受験英語」という枠組みを超えた、本質的な英語力です。

ジャンルを取り入れる時の留意点

ではここで、ジャンルを扱う時の留意点を2つ確認しましょう。

一つ目は、ジャンルを取り入れる時は、学習者の英語レベルに配慮することです。

初級レベルだと場面が具体的で身近なものを、上達するにつれて抽象的で複雑なものに移ることが現実的です。CEFRのA2レベルとB2レベルの学習内容では、文法の複雑さや表現の幅に違いがあるため、自ずとジャンルも異なってきます。

また、アカデミックなテキストにも多くのジャンルがあります。例えば、B1以上なら事実に基づく記述、レポート記事、議論、B2以上なら批評、論説、解説等です。一方、メール文のように、内容や複雑さによって、レベルを限定されないジャンルもあります。(ブリティッシュ・カウンシルでは、CEFRのレベルごとに扱う文法や表現、ジャンル(テキストタイプ)等を整理した資料Core inventoryを公開しています)

二つ目は、場面や状況を設定することです。

ジャンルは英語を使う現実(リアル)そのもの。言葉を通して、人は他者と心を通わせ、つながりをもちます。そのため、単にジャンルに沿った教材を使うことに加え、誰に対して、どんな状況で言葉を使っているのか、という設定がとても重要です。

中学校や高校の授業で、すべてのジャンルと設定を扱うことは不可能です。しかし、代表的なものを学び、「場面や状況によって適切な言い方がある」ことがわかれば、語いや文法表現を使い分ける素地ができます。場面や状況に配慮することは、思考力や判断力を育てることにもなります。

新しい教科書に対する期待

新学習指導要領は使える英語の習得を重視しています。そのため新しい教科書は、生徒たちに、より多様で、質の良い英語に触れる機会を提供できると期待されます。ジャンルを扱っている教材は、リアルな場面で、自然な英語を取り入れている、ということです。現役教師からは、「オーセンティックな教材を使うと、生徒のモチベーションが高まる」という報告がたくさんありますから、今後そんな声が更に高まるでしょう。

とは言っても、高校で新しい教科書を使い始めるのはもう少し先です。ブリティッシュ・カウンシルでは、世界中の中高生のために英語教材を公開しています。それまでの間、LearnEnglish Teens(英語)の教材をどうぞご活用ください。

生きた英語で使える英語を身につける - ジャンルの重要性(第1回)
生きた英語で使える英語を身につける - ジャンルの重要性(第2回)
生きた英語で使える英語を身につける - ジャンルの重要性(第3回)

参考文献

関連サイト