ブログ【英語教育のプロフェッショナルの声】
IELTSの試験では、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの英語運用能力を総合的に評価します。これら英語4技能のスコアを伸ばすためには、どのように学習を進めればよいのでしょうか。英語教育のプロフェッショナルであり、ブリティッシュ・カウンシル公認IELTS エキスパートとしてもご活躍中の正木伶弥先生と嶋津幸樹先生が、試験対策に役立つ情報を紹介します。
今回は、正木先生によるブログ「IELTSでかなえる英国留学」をお届けします。正木先生は、英国のパブリックスクールなどを経てロンドン大学に進学、IELTSをはじめさまざまな試験対策指導を手掛けておられます。このブログでは、正木先生が英国留学を通じて得た知識や英国の文化に触れて感じたことなど、実体験をふまえたリアルなトピックもお楽しみいただけます。
正木伶弥先生の「IELTSでかなえる英国留学」
先日、進学予定の大学院からメールが届いた。内容は「出願時に提出したIELTSは入学までに期限切れになるため、受け直すように」というものだった。どの会場で受けても問題は同一なのだが、私の頭には、ブリティッシュ・カウンシルでの受験しかなかった。その理由は、BCでの授業を毎週心待ちにしていた中学時代にある。振り返れば、私は、幼少時から「英国をこの目で見て学ぶ」という目標に突き動かされてきた。
ブリティッシュ・カウンシルの扉を開いた瞬間に広がる色と匂い、日本ではないようなあの感じが大好きだった。鮮やかなサリーを身にまとった職員、ドレッドヘアの先生、和気あいあいと学ぶ子どもたち…そう、この感じ!
13歳で通い始めたブリティッシュ・カウンシルは、私が15歳に日本を離れる直前まで通っていた。先生が私に言ってくれた「これほどアカデミックライティングの基礎が身に付いている高校生には英国でも会わないさ!」という言葉は確かにその通りになったのだが、高校生活はとにかく辛かった。地球の反対側から来た、学年でほぼ唯一の「完全な外国人」として寄宿校に乗り込んだのだから、それは当然のことだった。
それでも、教育面では日々感銘を受けた。例えば、数学と同じくらい楽しめた科目が「経済」。最終学年では、大学選択のために、各1時間〜1時間半はかかる重要な試験を3つ受けるのだが、その試験のメインは3つとも1400単語程度のエッセイだった。問題は1行だけで、解答は何を書いてもよいというものだ。「今まで習ってきた知識を使って、どんな考えを生み出せるのか見せてみろ」と言わんばかりのその形式に「俺はこのためにこの国に来たんだ!」と心躍らされた。
だからこそ、「試験前日に出来る事はない。ビーチでカクテルでも飲んでる自分を想像してろ!」と先生に言われたことがあった。その真意は、試験では創造性も重要であり、それは頭が疲労困憊状態では発揮されないということ。IELTS試験にもそれは当てはまる。SW(Speaking & Writing)では、アイディアを捻り出せるかどうかが鍵なのだ。
そうして20余年分の記憶をたどっていると、いつのまにか試験会場での受付が始まっていた。なんと、試験会場のスタッフは、スコットランド人ではないか。しかもグラスゴーの英語の音ではない。こうした英語に触れる経験は、日本では本当に稀だ。そうした意味でも、ここ、ブリティッシュ・カウンシルは再現空間ではない、本当の英国なのだ。ちょうど私がそうだったように、これから渡英する人にとって、あなたの長い旅路の出発点にここ以上にふさわしい場所はおそらくないだろう。