ブログ【英語教育のプロフェッショナルの声】
IELTSの試験では、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの英語運用能力を総合的に評価します。これら英語4技能のスコアを伸ばすためには、どのように学習を進めればよいのでしょうか。英語教育のプロフェッショナルであり、ブリティッシュ・カウンシル公認IELTS エキスパートとしてもご活躍中の正木伶弥先生と嶋津幸樹先生が、試験対策に役立つ情報を紹介します。
今回は、正木先生によるブログ「IELTSでかなえる英国留学」の第2回をお届けします。正木先生は、英国のパブリックスクールなどを経てロンドン大学に進学、IELTSをはじめさまざまな試験対策指導を手掛けておられます。このブログでは、正木先生が英国留学を通じて得た知識や英国の文化に触れて感じたことなど、実体験をふまえたリアルなトピックもお楽しみいただけます。
正木伶弥先生の「IELTSでかなえる英国留学」第2回
私にとって、東京のブリティッシュ・カウンシルは、中学生時代に毎週生徒として通っていた場所であり、その後の英国での高校進学につながった最初の窓口でもある。昨年、そのブリティッシュ・カウンシルでIELTSを受験したのだが、様々な角度から約15年前のIELTS試験と比較する機会となった。
IELTS試験の待ち時間、2つの過去の記憶が走馬灯のように蘇った。1つ目は、その高校が終わって待っていたIELTS初受験、2つ目は、その試験結果を進学先に提出した時の記憶である。
「今回のIELTS受験は大学院に提出するため、初受験時は大学に提出するためだったな…」「ここでのレッスンを終えて渡英したのは15才のときか…」「20年近く経って、ここで受験して、また渡英するんだから感慨深いような、人生進歩してるのか怪しいような…」と振り返りながら、「それにしても2000年代後半に受けたあの時と比べると、IELTSはなんと発展したことか」と心底感じた。
過去の受験時には、IELTS Ready Premiumなどというサポートは存在しなかった。いまでは、無料の受験者特典として、計40回分もの模試が提供されている。さらに、有料サポートの場合、1対1のオンラインレッスンの受講も可能で、ブリティッシュ・カウンシル認定IELTSエキスパート講師のレッスンも揃っている。特筆すべきは、世界中の講師が登録しているため、早朝や夜遅くでも受講できる点だ。IELTSの「I」は「International」の意であるが、その名の通りの体制といえるだろう。
また、IELTS Prizeというサポートも新たに導入されている。2023年度は、ブリティッシュ・カウンシルが選出した受験者(日本からは3名)に、最高80万円の学費補助が提供された。英公的機関の奨学金制度だからといって、進学先が英国である必要は全くない。事実、今年度の受賞者のうち1名は米国のブリガムヤング大学に進学している。このことは、IELTSの「I」の意味を再び思い出させてくれる。
一方で、これだけ受験者に対するサポートが手厚くなったIELTSだが、試験内容は当時とほぼ変わっていない。とくに、スピーキングに関しては、採点基準も問題構成も完全に同じだといえる。今回の受験後、「聞かれる質問の方向性も同じだな」と感じながら、初めて受験した時の苦労も思い出した。当時の自分は採点基準を理解しておらず、スピーキングでは「質問に対する正当な答え」を意識していた。これが評価の鍵ではないとは考えてもみなかった。
初回受験時のスピーキング試験に「幼少時好きだったおもちゃ」というテーマがあった。「バスのおもちゃが大好きでした。バスが大好きだったので。」と答えたのだが、試験官の反応がなく困惑した。「一体何が求められているんだ…」と思いながら、そのバスの外見を説明し、営業所を再現したくて同じバスを3台も持っていたことを話した。やや怪訝な顔で試験官を見返すと、彼女は一切表情を変えず「なんでバスが好きだったんですか?」と聞いてきた。私が「さぁ…ただ好きだったんです…」と返すと、しばし沈黙が続いた。
今なら、「理由はよく分かりません。脳内で何か起きているのだとは思いますが、自分は脳科学の綴りすら怪しいので…皆そんなものではないでしょうか?」とでも答えるだろうか。バスが好きだった理由は相変わらず答えられていないのだが、重要なのはそこではない。流暢に喋り続けられるかどうかが肝心なのだ。
発表されている母国語別のスコアを見ても、日本人受験者にとってスピーキングは鬼門と言える。しかしながら、IELTSのスピーキングには、図、絵、聞いた内容を口頭で要約するといった設問がない。必ず回答に含めなければいけない内容があるわけではなく、回答の自由度が高い。充実した無料対策ツールとあわせて、ぜひその点を活かしてほしい。
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