【プレスリリース】
6割以上の教師が「即興型のスピーキング活動」を実施し、新学習指導要領をすでに実践、スピーキングを学ぶことに関心がある生徒が多いと推定される一方、教員の効果的な指導技術は周知不足
具体的な授業技術と実践を連動させた研修は教員の指導力と生徒へ好影響
研修後、9割が「自信やモチベーションが向上した」、約8割が「生徒に成果があった」と回答
英国の公的な国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシル(所在地:東京都新宿区、駐日代表 マシュー・ノウルズ)は、中学校の英語教師を対象に、2019年10-11月に「スピーキング指導に関する実態調査」(対象173名)を行い、更に同年12月に同対象の内118名に「教員研修の成果を検証する調査」を実施しました。次期学習指導要領では、スピーキング指導において、その場で気持ちや意見をやり取りする即興力の育成が求められます。しかし、即興力の指導については不安や課題が多く聞かれます。本調査は、2020年度の移行期を控え、指導実践の現状を把握するとともに、改善策を探るために実施したものです。
■研修後、97%の教師が「授業改善のモチベーションが上がった」、86%が「授業に対する自信が高まった」と回答
- 11月に実施した即興型の「足場掛け」指導の研修の1か月で、教師の意識変容を調査したところ、97%の教師が「授業改善のモチベーションが上がった」(「とてもそう思う」「そう思う」の合計、以下同様)、86%が「授業に対する自信が高まった」と回答し、教師の意識に著しい変容があった。
- 「生徒に成果があった」という回答は79%で、「生徒が喜んで参加した」「生徒からの英語量が増えた」「反応が変わった」という声が非常に多く寄せられた。
■4割の教師は「スピーキングの支援は難しい」と回答、「スピーキングの指導に自信がある」教師は14%
- スピーキング指導に対する教師の意識については、4割の教師は「スピーキングの支援は難しい」と回答。また、「スピーキング指導に自信がある」と回答した教師は14%で極めて低い。
- 「生徒はスピーキング学習に関心がある」と9割以上の教師は認識しているようだが、自らの指導技術や実践に日々不安や悩みを抱えながら、生徒のスピーキング力向上に向けて取り組んでいることが判明。
■ 6割以上の教師が即興型のスピーキング指導を実践している一方、効果的な指導技術は周知していない
- 64%が即興型のスピーキング指導を「よく実施する」「時々実施する」と回答し、改善傾向にあると判断される。
- 効果的とされる指導技術である「教師がモデル(見本)を聞かせる」や「話す内容等を考える時間を生徒にあたる」を「いつも行う」はそれぞれ25%、15%であり、十分な実践が浸透していない。
- 36%の教師は、即興型の力を伸ばす機会を生徒に提供していない(まれに実施する、実施しないの合計)。
ブリティッシュ・カウンシルが11月に実施した即興型「足場掛け*」指導研修について
国際教員指導環境調査TALISが推奨する、教師が主体的に参加し授業と連動した教員研修の要素を反映した研修。まずは指導者の立場から、スピーキング活動(やり取り)のデモ授業体験と分析、指導技術の紹介と模擬授業、評価方法の実例(3時間)、さらに学習者の立場から、新学習指導要領にある技能統合型の英語学習(3時間)を通じた研修。
*「足場掛け」(scaffolding)とは、学習者を目標達成に導くために、教師がレベルに応じて必要な情報や支援を与えること。(建築現場で建築物を作るために仮りに足をおく場に例えている。)第二言語習得(学習者が母語の次に学ぶ言語を習得するプロセスを研究する分野)においては、エビデンスに基づき、実績及び定評のある指導技術が広く世界で共有されている。言語活動を行う際には、教師によって適切な「足場掛け」を提供することが必要であるとされている。
【まとめ】
今回の調査から、即興型スピーキング力の指導における指導改善は進んでいるものの、次期学習指導要領の実施を前に、学習・指導に更なる支援が必要であることがわかりました。一方、授業改善に焦点を当てた研修により、学習・指導状況は大きく改善することも明らかになりました。生徒のモチベーション及び英語力向上のためには、具体的で効果的な指導法の普及が急務であると考えられます。
学習指導要領の施行にあたっては、①指導上課題がある内容を的確に把握すること、②その課題を解決する有効な指導技術を教師に提供し、研修は体験型で進めること、③研修後は授業で活用し、授業実践の様子をモニターすること、等を確実に実施することが極めて重要です。
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