*《Artificial Things》の本サイト上での作品上映は終了しましたが、ストップギャップ・ダンス・カンパニーの公式ウェブサイト上で作品をご鑑賞いただくことが可能です。
《Artificial Things》について
英国で活躍する障害のあるアーティストと作品を紹介するシリーズ、「#CultureConnectsUs UK Disabled Artist Showcase」。
助け合う人々の勇気や心のもろさなど、ヒューマニティーの核心に迫る心情のドラマを詩的でエモーショナルに描き出す《Artificial Things》(2018)。障害のある・なしを越え、参加するアーティストが一丸となって新しい舞台の創造に取り組む英国のストップギャップ・ダンス・カンパニーによる本作は、2014年の公開以来、インクルーシブダンスの傑作として大きな話題となっていきました。英国ではGCSE(中等教育資格)のカリキュラムにも含まれています。
もともとは舞台作品でしたが、映画監督ソフィー・フィーネス とのコラボレーションにより26分のフィルム(本作)として再構成されたのが2018年。翌2019年のDANCESCREEN賞(15分以上の映像コレオグラフィー部門)を受賞し、国内外で高い評価を得ています。
同作品に出演し、ストップギャップ・ダンス・カンパニーで人材育成も務めるほか、2012年ロンドン・パラリンピック競技大会の開会式では、ダンス部門のキャプテンとしても活躍したローラ・ジョーンズに、作品に込めた思いを聞きました。
舞台作品からフィルム作品へ
舞台芸術をスクリーン上で再現するには多くの課題が予想されます。《Artificial Things》の制作チームはこのチャレンジにどのように挑んだのでしょうか。ローラ・ジョーンズ氏は、次のように語ります。
「映像だからこそ実現できることもあります。振付家のルーシー・ベネットは、特定シーンをクロースアップで想像していました。例えば、私とデイブ・トゥールの親密なデュエットがあるのですが、そのときに二人が視線と動きを交わす場面。これをクロースアップにすることで、オーディエンスをさらに引き込むことできました」
舞台版では90分あった本作ですが、フィルム化にあたり監督のフィーネス氏はこれを30分以下に凝縮しました。ソロ、デュエットからアンサンブルへと、ダンサーの数を段階的に増やして見せるなど、映像ならではのアプローチを採用しています。
もう一つ、舞台版との大きな違いは、「ロケーション」です。フィルム版では廃墟となったショッピングモールで撮影が行われました。現実社会から見放されてしまったかのようなパラレル世界に、スーツを着た男性が登場し、車椅子の女性がカメラの前を優雅に横切る——。愛の力を見せつけるカップルのデュエットは、繊細に計量された照明によって絵画のように表現されています。
障害のある・なしを超えた舞台の創造——ストップギャップ・ダンス・カンパニーについて
ストップギャップ・ダンス・カンパニーは、設立当初からコミュニティに根ざした活動を行ってきました。さまざまな障害や経験をもつダンサーに参加を求め、人材を育成していくことがその大きなミッションの一つ、と語るジョーンズ氏。
「私たちは作品を制作しシアターで発表するプロのダンスカンパニーですが、コミュニティとの連携は欠かしたことがありません。私は人材開発を担当していますが、とりわけ障害のある若いダンサーのためのサポートや機会の必要性を強く感じています。彼らがダンススキルを向上させるためのさまざまな教育活動を行っています」
近年ではSeedbedと呼ばれるダンス教師のトレーニングを実施しているといいます。多様な学生に対してインクルーシブなダンス教育ができるような知識と実践の普及を促す、同プログラム。ストップギャップ・ダンス・カンパニーの活躍は年々注目を増しています。
パンデミックの影響と作品づくり
パンデミックは、ダンスカンパニーの現場にも大きな影響を与えました。多くの人が出会い、触れ合い、同じ空間でひとつのことを成し遂げることが困難であったこの時期は、彼らにとっても大きな挑戦だった一方、新しい活動のきっかけになりました。
「(パンデミックは)大きな挑戦でしたが、新たな機会も生み出しました。実際に会えなくても、いまはZoomを使って一緒に踊っています。また、家でもダンスの練習を続けていけるようホーム・プラクティスもまとめました。オンラインのダンスクラスです。大変な時期でしたが、新しいことを発見し、人々とコミュニケーションを取る新しい方法を開発することができました」
*インクルーシブダンスのオンラインレッスンは、ストップギャップダンスカンパニーのYouTubeチャンネルから閲覧できます。
これまで培われてきた知識や実践的なスキルがオンラインで公開され、コミュニケーションの場も世界中に広がっています。だれもが楽しむことができるインクルーシブダンスの理解が、こうしたプログラムで一層広まったことは、パンデミックという困難から得た大きな成果といえます。
アーティストからのメッセージ
私がみなさんにお伝えしたい一番のメッセージは、多様な人々と協力することの重要性です。インクルーシブな方法を実践は、参加者すべてに利益をもたらします。私たちにはさまざまな違いがあり、その違いを受け入れることで個々に異なる人間の能力を一つにすること———その考えを《Artificial Things》の中にも感じ取っていただけると幸いです
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