レピュテーション・マネジメントを実践し、大学を世界トップクラスへ

背景

~大学における「レピュテーション・マネジメント」~

現在、世界各国の有力大学において、国際的なプレゼンスおよび競争力を向上させるため、大学のレピュテーション・マネジメントに取り組むことは、極めて重要なファクターであると位置づけられています。これは、国内外の学生が教育機関を選択する際や、キャリアチェンジで研究者が研究機関を選択する際などに、大学の「レピュテーション」や「ブランド」がもっとも重要な判断材料のひとつになっているということからも裏付けられています。

日本においても、「世界ランキングトップ100を目指す力のある大学への支援」を目標の一つとして掲げた、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業などをとおして、大学の国際化は着実に前進しており、レピュテーション・マネジメントに戦略的に取り組む必要性についても議論が始まっています。

A大学の背景

A大学ではこれまで、「広報室」「URA(※1)」「IR(※2)」「国際部」といった部署が、それぞれにレピュテーション・マネジメントに関する課題に取り組んでいました。しかし、より包括的で国際的な視点で取り組んでいく必要性が出てきたため、これらの部署を横串にしたインターナルコミュニケーションを推進していく部門を設立。学内へのレピュテーション・マネジメントの認知拡大と海外へ向けた情報発信に力を入れ始めていたところでした。

※1...「University Research Administrator(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)」。専門職としての研究者のサポートとマネジメントを行い、研究の活性化や研究開発の強化を支える役割
※2...「Institutional Research(インスティテューショナル・リサーチ)」。教育・研究などの大学の活動情報を収集・蓄積し、それをエビデンスとして大学の方向性、戦略を決めていく役割

 

課題

~大学の国際的競争力を向上させるために~

旧来、日本の大学では「教育や研究を充実させること」が大学の評判を向上させる最善の手段であるという考えが根付いていました。これは、レピュテーションを向上させる対象が、主に日本国内の学生や研究者であったためと考えられます。

今後、大学の国際化と世界大学ランキングトップ100を目指すには、グローバルな情報発信を行ってレピュテーションの向上を図り、世界中から優秀な学生・研究者を集めることが必要不可欠となります。そして、こうした「レピュテーション・マネジメント」を行うには、大学全体がその重要性を理解し、専門家の雇用や人材の育成、そのための費用の捻出といったバックアップをしていかなければなりません。

A大学では、レピュテーション・マネジメントの意義や重要性について、一部の教職員の間では認知されていたのですが、大学として戦略的に取り組むためには、学長、副学長をはじめ、その他教職員の理解を促し、賛同・協力を得る必要がありました。

 

取り組み

ブリティッシュ・カウンシルは、日英の有識者を招いて高等教育・研究の国際化やレピュテーション・マネジメントに関する課題について討論するシンポジウムやワークショップを断続的に開催してきました。その知識や経験を生かし、以下の取り組みをA大学へ提案し、共に実行しました。

1. 大学の課題およびニーズの把握

まずは、大学の現状と国際化に対する戦略を踏まえ、レピュテーション・マネジメントに関してどのような課題があるのかを洗い出すとともに、今回のターゲットに向けた最適なアプローチをご提案しました。

2. セミナーおよびワークショップの提供

高等教育機関におけるコミュニケーションやブランディングの専門家の、ルイーズ・シンプソン氏(ナレッジ・パートナーシップ 共同設立者/The World 100 Reputation Network ディレクター)を招聘し、大学にて、下記セミナーおよびワークショップを実施しました。

<セミナー>

対象者:学長、副学長を含む、大学の経営者層
時間:1時間(質疑応答を含む)
目的

  • レピュテーション・マネジメントについて、その概念や意義、英国を含め、海外における取り組み事例などを共有すること
  • 大学の国際化におけるレピュテーション・マネジメントの重要性について、理解を促進すること

<ワークショップ>

対象者:レピュテーション・マネジメントに関わる教職員
時間:3時間
目的

  • レピュテーション・マネジメントについて、その概念や意義、英国を含め、海外における取り組み事例などを共有すること
  • 留学生の獲得に焦点をあて、さまざまなグループワークを通して、広報やブランディングなど、これまでのレピュテーション・マネジメントについて大学の現状を理解し、今後の方向性を導き出すこと

セミナーおよびワークショップの実施に際し、講師のシンプソン氏と大学との課題・ニーズの共有、セミナー・ワークショップコンテンツの作成・準備、およびスケジュールの調整、などを並行して行いました。また、ブリティッシュ・カウンシルスタッフが、セミナー・ワークショップへ同行し、講師へのブリーフィングおよび交通・宿泊の手配など、実施におけるサポートも行いました。

3.報告資料の作成・提出

セミナー・ワークショップの実施後、大学とのフォローアップミーティングを実施し、報告書の必要事項を確認。それをシンプソン氏へ共有し、後日氏から上がってきた報告書の草案をチェックしたのち、最終版を大学側へ提出しました。

 

結果

今回のセミナー・ワークショップをとおして、A大学からは以下のようなお声をいただきました。ブリティッシュ・カウンシルでは、大学の国際化および英国大学とのパートナーシップ構築へ向け、引き続き支援を続けていきます。

  • 学長や副学長をはじめとした大学のシニアマネジメント層に対し、レピュテーション・マネジメントの重要性の理解が深まった
  • レピュテーション・マネジメントの基礎的な知識や他国でのケーススタディを知ることができた
  • 専門家から、レピュテーション向上のための提案を受けられた
  • ただし、意識が大学全体に根付いていくには、まだ時間が必要。継続的な取り組みを行っていかなければならない
  • 部局ごとにアプローチするターゲットが変わるし、アプローチ方法も変わる。そのため、大学という大きなくくりだけでなく、各部局レベルでレピュテーション・マネジメントの意識を高める必要がある

本サイト内の関連ページ