追憶の絵画
コロナ禍で、多くの人が深い孤独や悲しみを経験しました。困難なときに、たとえそばにいることができなくても、相手を思いやる気持ち示すことはできるはずです。本編では、人々の生きた記憶をキャンバスにとどめ、慰めや追悼の気持ちを示すいくつかの絵画をご紹介します。レンブラントが1634年に描いた肖像画を見てみましょう。83歳の老婆が、その生き様や信条を表すかのように、慎ましい黒い装束に身をまとっています。刻まれた深い皺や虚空を眺める表情には、当時20代だった若き画家による洞察や眼差しを感じ取ることができます。クロード・ モネの大作《睡蓮》(1916年以降)は、最愛の妻と息子を失った悲しみの中で描かれました。波打つ庭池の水面に映り込む樹木、空や雲。光と色彩が溶け合うキャンバスに、画家の到達した心情の深さを読むことができるでしょう。ロンドン・ナショナル・ギャラリー、アソシエイト・キュレーターのプリエシ・ミストリが解説します。
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オンラインでアートが鑑賞できる『A Curated Look』とは
パンデミックによって、私たちの生活は大きく変化しました。家族や友人との距離、自然との関係、住まいのあり方など、その変化は日常を取り巻く内外の環境にも影響を与えています。そんな今だからこそアートを鑑賞することで得られる、新たな気づきとは——。300年以上前に描かれたフェルメールの肖像画に、ルーベンスの風景画に、私たちは改めて、何を読み取ることができるでしょうか?
ロンドン・ナショナル・ギャラリーが送る『A Curated Look(キュレーターの視点)』は、パンデミックの最中でいまこそ注目すべき作品を、キュレーターそれぞれの視点で選び、解説するオンライン・ギャラリー・トーク・シリーズです。自らの邸宅で多くの時間を費やした貴婦人像やアトリエで制作に勤しむアーティスト、田園地方に足を運びの大自然を描いたコンスタブルやコローなど、同館コレクションを代表する多くの名作が登場します。画家が描いたさまざまな光景やその眼差しを通して、私たちは空間を捉え直し、美を再発見することができるでしょう。5人のキュレーターが、ロックダウン中の自宅リビングからお届けします。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
ロンドン中心部トラファルガー広場を望む荘厳な建築が、毎年多くの観光客を迎えるナショナル・ギャラリー。13世紀半ばから20世紀初頭までの2300点以上の作品が所蔵されています。イタリア・ルネサンスからポスト印象派に至る幅広い時代、地域とジャンルを網羅し、年間600万人以上の入館者数を誇る世界有数の美術館として知られています。