英国政府は文化芸術セクターにおける新型コロナウィルス感染症危機対策として、約2100億円(15.7億ポンド)の緊急支援パッケージを提供することを7月5日(日)に発表しました。
対象となるのは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの博物館、美術館、劇場、ホール、独立系映画館、文化遺産などで、国から助成金や融資を受けることが可能となります。この過去最大規模となる支援は、パンデミックで大きな打撃を受けた英国の文化芸術セクターが活動を再開していく上でのライフラインとなり、フリーランスのアート関係者の雇用支援にもつながると予想されています。ボリス・ジョンソン首相は、「劇場や美術館は我が国にとって心臓の鼓動のような存在であり、今回の資金援助によって、将来の世代のために文化セクターを守ることができれば」と述べています。
3月中旬からロックダウンにより活動休止を余儀なくされたいた英国の文化芸術セクターでは、政府の重点的な支援なしでは今後取り返しのつかない事態に直面するとして、ロンドン交響楽団(LSO)音楽監督のサイモン・ラトルや、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)芸術監督のグレゴリー・ドーランをはじめ、多くの関係者が政府の緊急支援の必要性を訴えていました。
音楽分野ではロックダウンによる業界の壊滅的なダメージを防ぐために#LetTheMusicPlayという運動が立ち上がり、著名な音楽家らが署名していました。今回の緊急支援策は、こうした文化芸術セクターからの、さまざまな声に呼応し発表されたと言われています。
今回の緊急支援パッケージ発表を受けて、政府および文化芸術関係者がコメントを発表しています。
「文化芸術は私たちの国のスピリットであり、急速に成長する創造産業の要となっています。今回の大規模な投資は、文化芸術への政府のコミットメントの高さを示しています」(オリバー・ダウデン デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣)
「今回の政府による寛大な支援は非常に歓迎すべきものであり、切実に必要とされているものです。私たちは文化的な生活の再構築を始めることができます。文化芸術セクターは相互に結びついた産業なので、この資金が草の根から浸透し、全体の景観が育まれることを願っています」(ロンドン交響楽団 音楽監督 サイモン・ラトル)
「この危機的な時期に、芸術文化セクターへの政府からの支援のニュースを聞いて、私たちは非常に嬉しく、そして安心しました。デジタル・文化・メディア・スポーツ省、財務省、そして文化芸術が社会において果たす重要な役割を示すために声をあげてくれた多くの仲間たちに感謝しています」(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー エグゼクティブ・ディレクター キャサリン・マリオン / 芸術監督 グレゴリー・ドーラン)