教室授業風景:手をあげている生徒達
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Mat Wright

英語4技能 「世界に通じる英語力を身につける」

グローバル化が急速に進む社会では、国際共通語である英語によるコミュニケーションスキルの重要性は高まる一方です。英語でコミュニケーションができることは、特定の職業や地域に限らず、生涯にわたりさまざまな場面で必要とされ、人生の中で可能性を広げます。国はこうした社会背景を踏まえ、英語教育改革を推進しています。

その主軸にあるのが、英語を使って「何ができるか」という観点です。英語学習で身につける知識や技能が、実際のコミュニケーションの場面で活用され、思考や判断、そして表現できること、つまり、目的や場面に応じて、実際に「英語を使う」ことを想定しており、求められているのは本質的な英語力です。

そこでは、当然ながら「聞く(リスニング)」「話す(スピーキング)」「読む(リーディング)」「書く(ライティング)」という4つの力――いわゆる「英語4技能」を重要な要素と位置づけ、ブリティッシュ・カウンシルが長く取り組んできたことと重なります。

 

英語4技能を総合的に学ぶ

言語によるコミュニケーションが行われる場面では、「聞き手」「話し手」「読み手」「書き手」が存在し、必ず「聞く」「話す」「読む」「書く」のいずれか、または複数のスキルを使います。自分の気持ちや意見を相手により効果的に伝えるには、これら4つの技能をそれぞれの目的や場面、状況に合わせて適切に選択したり組み合わせて、情報や考えなどを的確に理解したり、適切に伝え合う必要があります。

ブリティッシュ・カウンシルでは、母語で行っている自然でスムーズなコミュニケーションを、英語においてもできるようにするため、そして、本当に通じる英語を身につけるため、4技能を総合的実践的に学ぶことが効果的であると考えています。特に「話すこと」においては、人前でのスピーチやプレゼンテーション以外に、実際の生活での即興で行う多種多様な「やり取り」、そして「書くこと」においてはエッセイだけでなく、ブログや旅行記、報告書に至るまでさまざまなジャンルでの表現を念頭に置く必要があります。

 

従来の英語教育の課題と今後

これまでの学習指導要領においても、4技能をバランスよく育成することを目標としており、高校では、授業で英語に触れる割合を増やし、生徒自身が多くの英語を使う授業を目指してきました。日本では、教室外で英語を使う場面が非常に限られるため、これは非常に重要なアプローチです。しかし、文部科学省が実施した調査*によると、話す及び書く活動が十分には実施されていないという結果がでています。

これまでの日本の英語学習や指導は、「語彙や文法の知識量」に主眼を置き、「文法訳読」や「読解偏重」であった、という指摘があります。これは、大学入試や高校入試が2技能(リスニングとリーディング)中心であることとも関連しており、特にスピーキング(やり取り)の力を測ることはほとんどありません。英語は「スキル」であるにも関わらず、実際には「使う」ことを念頭においておらず、従来のような「入試」を最終ゴールとした学習・指導では、真のコミュニケーション能力の育成は不十分です。

2020年改訂の新学習指導要領では、小・中・高一貫して「使える英語」をよりバランスよく育む取り組みを進めています。そのためには、指導目標、実際の授業、そして評価、と全体で整合性のある実践が必要です。

*文部科学省「英語教育改善のための英語力調査事業報告」より

 

英語4技能バランスよく育てる目標 -「できる」

社会生活におけるコミュニケーションでは、日常生活で出合うさまざまな場面や目的、状況に合わせて、情報や意見を発信し、相手とやり取りをしながら問題解決等を行います。そういったスキルは、従来のような「正解」「不正解」という視点だけでは適切に測ることはできません。

そこで必要となるのが、数値によって能力を判断するのではなく、できることに沿って熟達度を評価していく、外国語の運用能力を測る指標です。海外では欧州評議会が作成したCEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)を用いることが一般的です。CEFRは、「言語を使って何ができるか(Can-Do記述文)」で表記されており、具体的な活用力をより正確に把握することができるため、アジアをはじめ世界各地の教育省がこの指標を採用しています。日本でも新学習指導要領では、CEFRに沿った目標設定がされており、英語が国際共通語であるということから、世界のどこであっても、同じ指標を用いることに大きな意味があります。

 

英語4技能バランスよく育てる授業

学校教育で児童・生徒が英語4技能を身につけていくためには、授業を「英語を使う場」にすることが重要です。それもさまざまな場面を設定し、多様な言語活動を行うことが求められます。

仮に授業で文法や単語力の強化ばかりに重点をおくとしたら、それは言わば、泳げるようになるために、プールサイドでトレーニングや泳ぎ方の知識を増やすことに終始し、実際には水に入って練習しないことと同じで、これでは、楽しく安全に泳げるようにはなりません。日本では、実際の生活で英語に触れる機会が限られます。それだからこそ、授業の役割は非常に大きいです。

4技能バランスよく育てるためには、All Englishと言われる教師の英語量重視のアプローチを脱却し、教師も生徒も豊かに英語を使うEnglish Richな授業を推進することが効果的です。教師が技能別の活用場面や状況を踏まえ、学習過程に合わせ、日々の授業で具体的で段階的な支援(足場掛け)を提供できることが大切です。このように、教師には一定の英語運用力に加えて、生徒が英語を使う言語活動を充実するための実践的な指導力が求められます

 

英語4技能評価が求められる理由

新学習指導要領では、英語を一つの知識としてとどめることなく、実践的なシーンで有効に活用できる力を目指しています。そのためには、小学校から中学校、高等学校、そして大学にいたるまで、一貫して、「英語を使って何ができるか」という到達目標を共有することが求められます。これは、「文法知識」や「単なる英会話」に留まらない、本質的な英語運用力の重視へと大きく舵を切ったことを意味しています。この流れのなかで、英語力の評価および入試において、4技能の資格・検定試験の活用は自然の流れといえます。2019年に実施された、中3生対象の「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」においても、英語は4技能評価が求められています。

文部科学省の調査によると、日本の中学校・高等学校では、「話すこと」と「書くこと」などの言語活動が十分に行われていないことや、知識や知識を生かしてコミュニケーションの目的・場面・状況等に応じて適切に表現することなどに課題がある、という指摘があります。これは、「やり取り」の力を練習したり評価したりする機会が少なかったことと関連しているでしょう。また、日本人全体の英語力においても、「話すこと」と「書くこと」には同じような傾向があると言われています。

 

英語4技能試験とアセスメント・リテラシー

英語4技能試験を取り入れることは、使える英語力を育てる上で非常に有効です。しかしながら、その4技能試験の導入の効果は、試験それぞれの目的や求める力、特徴などを理解した上で、十分に検討をすることが前提です。世界にある多数の4技能試験は、異なる目的や対象、フォーマット、評価基準等をもっています。導入する試験が、学習者にどんなスキルを求めているかを十分に確認し、生徒自身が求められる力を理解した上で学習に取り組むことが大切です。試験をゴールにするのではなく、将来どんな風に使えるようになりたいかをイメージした上で、その力を伸ばしてくれる試験を選びたいものです。

こういった背景から、世界的に、教師の「アセスメント・リテラシー」に関心が高まっています。「アセスメント・リテラシー」とは、試験の特徴や求められているスキルを十分に理解していることと、学習目標・指導と評価を適切に連動させることができる力を指します。教師がアセスメント・リテラシーを高めることで、例えば目の前にある試験だけを目標とした機械的な試験対策に陥ることを回避し、試験の先にある本来目指すゴールに焦点を合わせ、効果的な評価方法を選択することができます。

 

英語教育のオーソリティとして

実際に使うことのできる英語力の向上は、ブリティッシュ・カウンシルが当初から掲げてきた英語教育の理念。それを軸にして、当機関ではIELTSをはじめとした英語運用能力の評価システムや、英語教育の質の向上を支援する各種サービスを提供してきました。

今日、文部科学省が進めている英語教育改革により、英語教育が目指すべき方向性にあらためて注目が集まっています。ブリティッシュ・カウンシルは、これからも世界に通じる英語習得へ向け、日本の英語教育の質の向上に貢献していきたいと考えます。