航空宇宙工学分野において、若手研究者をグローバル人材に育成するにはどのようにすればよいか?
チャレンジ
これからの航空機では、環境にやさしく、燃費がよく、安全性が高いことが求められる。そのため、航空機を開発する研究者は、材料科学や生産システムなど、幅広い分野の最新技術に精通して技術開発を進めなければならない。また、莫大な開発コストと非常に長い開発期間を要する航空機の開発は、一国でできることではなく、国際的分業と協力が不可欠である。
そこで、本ワークショップでは、様々な教育プログラムを提供することにより、学問分野の領域を超えて技術を開発し、異文化すなわち異なる見方・異なるアプローチを理解し、さらに他国の研究者・技術者とコミュニケーションをとりながら技術開発を進めることができるようなグローバル人材の育成にチャレンジする。
目的
- 特別講演および工場見学を通じ、日本の最新の航空機・航空機器の製造技術を学ぶ。
- 世界最先端の技術を誇る日本の複合材製造技術とその航空機への適用について学ぶ。
- 名古屋大学航空宇宙工学専攻で取り組んでいる研究の内容と研究施設について理解を深める。
- 日英の他大学の学生・若手教員と実験と議論を行うことにより、批判力とコミュニケーション能力を育てる。
- 本ワークショップのプログラムを通じて、メンバー大学の参加者間で人的ネットワークの構築を図り、将来の研究協力と人的交流の礎を築く。
- 日本の歴史と文化を学ぶ。
プログラムの概要
日英で行う航空宇宙工学ワークショップの第1部として、2014年8月4~8日に名古屋大学で以下のイベントを実施した。
- 招待講演:3人の研究者による特別講演:内容は、(1)日本の航空宇宙産業の国際協力とMitsubishi Regional Jet (MRJ)の開発、(2)複合材の開発とその航空機への応用、(3)数値流体力学と実験流体力学の統合
- 工場見学:(1)三菱重工業(MHI、民間航空機とH-IIAロケットの製造)、(2)島津製作所(航空機器の製造)、(3)ナショナルコンポジットセンター(NCC、 複合材の研究)、 (4)かかみがはら航空宇宙科学博物館
- 名古屋大学航空宇宙工学専攻の実験室見学
- グループ実験とそれに関する討論
- 名古屋大学の産学連携に関する講演
- 日本文化の学習(訪問先:金閣寺・清水寺・西陣織会館)
プログラムの成果
このワークショップの主たる成果は3つある。1つめの成果は、参加者が日本の航空宇宙産業の最新技術を学ぶことができたことである。日本の企業は複合材に関して最先端技術を有し、ボーイング787などの翼と機体を製造している。また最近では燃費性能に優れたMRJを完成させた。これらの技術に関して、三菱重工業、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ナショナルコンポジットセンター(NCC)の指導的な立場にある研究者の講演から日本の最先端技術を学ぶことができ、また三菱重工業、NCC、島津製作所の見学は参加学生にとっては貴重な体験であった。
2つめの成果は、名古屋大学航空宇宙工学専攻で取り組んでいる研究の内容と研究施設について理解を深めることが出来たことである。実験室を見学するとともに、ひとつのテーマについて実験と議論を行った。大学の研究室の内部を見学する機会は少なく、またそれぞれの研究スタイルがあるので、参加学生にとっては、大変参考になったと思われる。特に英国からの参加者からは、若いうちから実験を中心に進める日本の大学の研究は大変印象深かったとのコメントが得られた。
3つめの成果は、日英の若手研究者の間で将来の研究交流の礎となるネットワークづくりが出来たことである。今回、企業や大学で将来の研究を担う若手研究者(英国の大学から7名、日本の大学から13名)が、グループ研究などを通じて活発な議論を行い、またお互いの研究内容について紹介しあったことで、人的ネットワークづくりができたと信じる。
なによりも、このワークショップを若者が楽しんでいる姿をみることができたことは、企画者としては、最高の喜びであった。
リード大学
- 名古屋大学
- サウサンプトン大学
- ブリストル大学