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British Council / Photo by Kenichi Aikawa

世界中の観客に向けて優れた音楽を提供するだけでなく、そのミッションの中核に「ラーニング」を位置づけているロンドン交響楽団(LSO)。1990年に教育プログラム「Discovery」をたちあげて以降、子どもから大人まで参加者が主体的に音楽を楽しめるようなクリエイティブなプログラムを展開し、オーケストラによる教育プログラムを牽引してきました。

2020年に向けて日本の文化芸術セクターでも、あらゆる人々が音楽や芸術に親しめる環境作りや、文化芸術機関の社会的役割について再考する動きも広まっている中、ブリティッシュ・カウンシルはLSOでマネージング・ディレクターを務めるキャスリン・マクドウェル氏を迎えフォーラムを開催しました。今年25周年を迎える「Discovery」の歩みや、2012年のロンドン・オリンピック・パラリンピック競技大会の中心地となった東ロンドン地域の子どもたちを対象に2008年から展開し、五輪開会式でのパフォーマンスにもつながったLSO on Trackプログラムなどについてご紹介したほか、これからの教育プログラムの在り方について日本の音楽関係者の方々と意見交換を行いました。フォーラムにはLSOの楽団員であるべリンダ・マクファーレン氏も参加、音楽家として教育プログラムへの参加がどのような意味を持つかお話頂きました。

開催概要 

日時: 2015年9月29日(火)14:30-16:30 
会場: 東京芸術劇場 5階 シンフォニースペース
主催: ブリティッシュ・カウンシル、東京都/東京文化会館・アーツカウンシル東京・東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力: KAJIMOTO

スピーカー

キャスリン・マクドウェル
ロンドン交響楽団マネージング・ディレクター

北アイルランド生まれ。エジンバラ大学で音楽を学んだ後、ウェルシュ・ナショナル・オペラを経て、80年代にはスコティッシュ・チェンバー・オーケストラにおいてデベロップメントマネージャーを務め、多くの教育・コミュニティプログラムを手がけた。アルスター・オーケストラにおいてオーケストラの運営や計画、海外公演等に携わった後、アーツカウンシル・イングランド音楽部門ディレクターを経て、90年代後半にはウェールズ・ミレニアム・センターのチーフエグゼクティブとして、新しいアートセンターの立ち上げに関わった。2002年~2005年までシティ・オブ・ロンドン・フェスティバルのディレクターを務めた後、2005年8月より現職。2011年には大英勲章CBEを授与。

ロンドン交響楽団の教育プログラム「Discovery」

英国を代表する世界有数のオーケストラであるロンドン交響楽団の教育・コミュニティプログラム「Discovery」。今年で25年目を迎えた「Discovery」は、幼児からお年寄りまで、年間60,000人以上に音楽を提供している。オーケストラ音楽に馴染みの薄い人にも、楽しく、分かりやすく聴いてもらえるようなコンサートから、参加者に主体的に音楽を作ってもらうワークショップ、将来演奏家、指揮者、作曲家を目指す若者を育成するプログラムなど多種多彩な機会を提供している。2003年には教育プログラムを展開する拠点として東ロンドンにLSO St Luke’sをオープンし、地域の人々が参加するフュージョンオーケストラや、ガムラングループなどを開催。2008年には、LSOの本拠地であり、オリンピックのホームグラウンドでもある東ロンドン地域の子どもたちを対象にしたクリエイティブなプログラム「LSO On Track」をたちあげ、2012年のロンドン五輪の際には、LSO On Trackに参加している若手演奏家と楽団員がともに開会式の舞台で演奏を行い大きな話題となった。これらのLSOの取り組みは、人々が音楽の魅力を「discovery=発見」し、音楽を通じてコミュニティの絆がより深まっていくことを目的としており、Discoveryの活動は、オーケストラ全体の発展において欠かせないものとして、楽団員達も深く関わっている。2014年度には「Discovery」の活動として946のワークショップと、147のコンサートが実施され、年間予算は130万ポンド(約2億5千万円)だった。

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