英国では新型コロナウイルス感染症対策として実施されたロックダウンの緩和が始まり、政府による文化芸術機関への大規模な緊急支援策が発表されるなど、文化芸術活動の再開に向けた動きが徐々に本格化しています。一方で、フリーランスとして活動している場合も多い障害のあるアーティストやアート関係者は、パンデミックの影響により深刻な状況に直面しています。こうしたなか、障害のあるアート関係者を排除しない支援策の実現と、コロナ後の文化芸術セクターがより平等で包摂性の高いものとなることを求め、立ち上がった人々がいます。
2020年5月、英国の障害のあるアーティストや、その活動を支援するアート団体が手を結びアライアンス「#WeShallNotBeRemoved」を結成しました。発足からわずか1ヵ月でメンバーの数は400を超えています。#WeShallNotBeRemoved は、文化芸術分野の新型コロナウイルス感染症に対応した支援策や復興への道筋において、障害のあるアーティストやアート関係者が排除(remove)されることのないよう、英国の文化政策関係者や文化芸術関係者に求めるために立ち上げられました。目的に掲げられているのは:
- 新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する現在、そしてコロナ後の英国において、障害のあるアーティストやアート関係者による持続的な活動を可能にすること。
- 現在、危機に直面している文化芸術・クリエイティブ産業に従事する障害のある人や、その活動を支援するアート団体の声を広げること。
英国では2012年ロンドン五輪文化プログラムの一環として展開された障害のあるアーティストの活動を支援する「アンリミテッド」などの取り組みもあり、障害のあるアーティストがその優れた芸術活動により認知度を上げ、幅広い芸術分野で活躍の場を広げてきました。美術館・博物館、劇場・ホール、フェスティバルなどセクター全体においても企画、運営、広報などあらゆる面で、障害のあるアーティストやスタッフおよび観客のアクセスを担保するための取り組みが、これまでにない規模で推進されてきました。
ブリティッシュ・カウンシルも、より平等で包摂的な文化芸術セクターの実現を目指す多くの英国のアート団体やアーティストと協働しています。#WeShallNotBeRemoved にはグレイアイ・シアター・カンパニー、ドレイク・ミュージック、シェイプ・アーツ、ストップギャップ ダンスカンパニー、アンリミテッドなど、ブリティッシュ・カウンシルや日本のパートナーとともに日本で活動を展開してきた団体も多数参加しています。
2020年5月の発足後、#WeShallNotBeRemoved はこれまでに二つのキャンペーンを展開してきました。ひとつは、英国デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣およびスコットランド、ウエールズ、北アイルランドの文化大臣に向けた公開書簡。コロナ禍の英国の障害のあるアーティストやその支援団体の将来にについて保護措置を求める書簡に、150名を超える障害のあるアーティストや文化芸術のリーダーが署名しました。
2020年6月17日には、二つ目のキャンペーンとして、障害のあるアーティストが直面しているパンデミックに起因する格差に焦点を当て、誰も排除されることのない文化芸術セクターのパンデミックからの復興を呼びかけ、ソーシャルメディア上でキャンペーンが展開されました。英国の数々の障害のあるアーティストやアート団体がソーシャルメディアでハッシュタグ #WeShallNotBeRemoved および #EndAbleism をつけ、多様な取り組みを紹介しています。
ハッシュタグ #WeShallNotBeRemoved およびアライアンスの公式ウェブサイトで、ぜひ今後の活動にもご注目ください。