英語4技能をバランスよく伸ばすため、教師の指導力が求められています。英語教育を支援する教員研修について、ブリティッシュ・カウンシルのシニアマネージャーとして学校英語教育に携わる、河合千尋に話を聞きました。

——学校の授業で、生徒の英語4技能をバランスよく伸ばす方法について教えてください。4技能の指導は、相互にどう関連しているのでしょうか

話すことを学ぶと聞く力に、書くことを学ぶと読む力によい影響を与えます。これは、英語の音を出すことでその音を聞き取れるようになり、自分の考えを表現する文を書くことで、他の人が書いた文を理解できるようになるからです。現在生徒の多くは、発信能力(話す・書く)よりも、受信能力(聞く・読む)のほうが高い傾向にありますが、4技能を伸ばすには、「話す」と「聞く」、「読む」と「書く」、を意識的に関連付けて教えると効果的です。

また、どの技能も、知識とスキルを組み合わせて教えることが上達の秘訣です。話す技能を習得するには、英語の音を覚える(知識)だけでなく、相手が理解できるように発音する(スキル)必要があります。授業では、説明だけでなく実践的な活動を取り入れます。手本を見せながら実践して、「どこがうまくできていたか」「どこを直せばよいのか」をフィードバックしながら練習する方法が有効です。

——ブリティッシュ・カウンシルの教員研修では、英語4技能の指導力を上げるために、どのような支援を行っていますか。その成果は?

ブリティッシュ・カウンシルの教員研修では、実践的かつ具体的な指導スキルを紹介しています。授業では生徒が英語を使う活動を増やすことが大切ですが、その具体的な進め方を求めておられる先生方が多いです。私たちは、指導法の説明だけでなく、実習を通して、指導力と自信の両方を高めていただける研修を行っています。

研修では、まずは学習者目線でデモ授業に参加していただきます。次に指導の段階を分析し、指導スキルの練習を行います。「(他人がやるのを)見る」と「(自分が)やってみる」には大きな違いがありますから、この実習中心の進め方は非常に好評をいただいています。「明日の授業で使えそう!」「やってみたい!」といった声が多く届いています。

例えば「スピーキング指導」といっても、それはいくつものステージやテクニックに細かく分解でき、教師はたくさんの「足場かけ」を提供しています。「足場かけ」とは、生徒の上達のために、生徒のレベルにあわせて教師が提供する支援や情報のことです。     この「足場かけ」を効果的に行えるようになるには、説明を聞くよりも、実際に練習するのが最も効果的です。そのため、研修の進め方が非常に大切です。

研修で学んだスキルを授業で実践した先生方からは、「生徒が活動を楽しんでいる」「教えてもらったテクニックを使うと指導がしやすい」といった声が届いています。生徒にとって有意義で楽しく「英語を使う」機会が増えると、生徒に少しずつ変化が現れます。そうすると、先生方も手ごたえを感じていただけるはずです。

——生徒の英語4技能を伸ばすうえで、評価はどのような役割を果たすでしょうか。

授業では、英語で「できること」を増やしていくことが大切です。実際のコミュニケーションの場面を想定し、状況や目的を判断しながら知識とスキルを駆使し、聞いたり話したり、読んだり書いたりします。評価とは、それがどの程度できるようになったかを把握し、次にどんな学習が必要かを計画するための情報を集めることです。

評価で重要になるのが「アセスメント・リテラシー」です。これは、評価(=アセスメント)について、十分な知識と理解を基に正しい判断や適切な活用ができる力(=リテラシー)のことです。具体的には、試験の特徴を把握し、学習目標や指導と連動させる力です。

例えば、やり取りの力には、自分から質問や相づちをしたり、話し手と聞き手の順番が変わる(ターンテイキング)力が必要ですので、授業でも評価でもその視点を取り入れることでやり取りの力が上達します。書く力では、スペルや文法の正確さを評価する出題もあれば、自分の気持ちや意見を理由と共に述べる内容重視の出題もあります。生徒の表現力をつけるためには、こうした出題意図を理解した上で、授業を行います。

4技能を育てる上では、生徒にどんな力をつけたいかを踏まえ、個々のな試験がどんな力を求めているかを理解し、適切な試験を選択する力が必要です。教師のアセスメント・リテラシーが高まれば、授業での学習目標や指導と評価が有機的に連動します。教師だけでなく、生徒や保護者もアセスメント・リテラシーを得ることで、学習と評価の関係について理解が深まり、4技能を伸ばす取り組みは一層充実していきます。