一口にテストといっても様々な目的(測りたい力)があり、出題の仕方もいろいろです。英語4技能テストの出題とテスト結果から、受験者の英語力についてどのような解釈ができるかを考えてみます。

ここでは音読問題を例に取り上げます。音読は授業で最もよく行われている言語活動のひとつです。中学校でも高等学校でも、教科書にある本文を個人で読んだり、全員で声を合わせて読んだりする様子がよく見受けられます。

テストにおいて音読を取り入れた場合、どのようにテスト結果を解釈できるでしょうか。

生徒Aは、テストで出された初見の文章を、声に出して流ちょうに読むことができるとします。この生徒は書かれた単語を認識し、適切にそしてすらすらと音声化することができることを示しています。そのため、異なる文章であっても、よく似た単語が出てくるような場合、流ちょうに読むことができる力があると推測できます。

しかしこのことから、スピーキング活動が上手にできると判断できるでしょうか。生徒Aは書かれたものを読み上げることは上手かもしれませんが、即興的なスピーチは不得意かもしれません。同様に、即興的なやり取りの力も測っていないので、どちらもできないかもしれません。

一方、生徒Bは音読の課題は苦手だとします。そのため、テストで初見の文章を声に出すという課題が出されると、あまり高い点数はとれません。テストでは読むことに対する課題が明らかになり、音声面の力を発揮できないからです。スピーキング力を準備された原稿を読み上げることで測定しようとすると、読むことに課題がある生徒はほとんど点数がとれないでしょう。

けれども、このテストでは即興性を求めるスピーキング力を示す情報は収集されていません。そのため、もしかしたら、生徒Bは即興的なスピーキング力、例えば、人とやり取りをする力は非常に高いかもしれません。

ちなみに、「読めないけれども話すことができる」生徒がいることは、英語学習を「読むこと」から始めることとも関連があります。小学校では、「聞くこと」「話すこと」から英語学習が始まっています。音声で十分慣れ親しみ、「読むこと」が段階的に導入された場合、ここで上げている様子には変化があるかもしれません。

以上のように、音読もスピーキングも音声を出すという点では同じですが、テスト結果をどう解釈するかによって、個々の生徒の強みや弱みをどう把握できるかが変わってきます。

音読は読む活動の1つですが、発音やイントネーションを測るという視点でスピーキング活動の1つと判断されている場合があります。そのため、テストが測定していることを十分に見極め、その結果を「何ができるか」という視点から妥当な解釈することが大切です。

 

   

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