スピーキングの授業評価:高校における実践から
松尾 美幸 岩手県立不来方高等学校 指導教諭
■はじめに
今日は主に前任校の福岡高校で実際に行っていたスピーキング・テストを、今年4月に赴任した不来方高校で、4月に入学して2ヵ月後の1年生に同じものを行ってみて、実際の生徒の様子と反応についてお話できたらと思います。
始めに学校の特徴をお話します。昨年までは福岡高校に勤務し、今年から不来方高校に転勤になりました。
○福岡高校…創立118年。非常に保守的。生徒たちは従順・受容力が高い。英語で発信することには自信が乏しく、スピーキングのときに口が重い生徒が多い。
○不来方高校…創立31年。校訓は「自由・創造・飛翔」。各学年に7クラス。普通科の中に「芸術」「人文」「理数」「外国語」「体育」の五つの学系がある。学系によってカリキュラム・生徒の進学希望・学び方・気質は多様である。
■テスト実施(スピーキングの指導と評価の難しさ)
スピーキングのテストを実施するとなると、教師側からは次のような課題が挙げられます。
1)40人×7クラスで一人一人のパフォーマンス・テストにすると、かなり時間がかかる。
2)テストの目的と方法、評価基準の整合性、妥当性、実用性等を満たす評価が難しい。
生徒の視点から見ますと、次のような困難があります。
1)度胸がある生徒でも、人前で英語を話すこと、特に即興で話すことには抵抗がある生徒が多い。
2)1対1のテストや大勢の前での発表は緊張感のあまり話せなくなる生徒もいる。これは英語の能力以前の問題。本当の意味で英語の力が測れているかどうかが分かりにくい。
また、スピーキング・テストそのものが持つ難しさもあります。
1)「発表」は評価しやすいが、「やり取り」は評価が非常に難しい。インタビューテストでは、多く音場合、生徒は先生の質問に答えているだけで、実は双方向のやり取りになっていない。
2)パフォーマンス・テストがイベント的にならないよう、授業内で指導したこととテストをどう関連づけるか、いかにフィードバックをしていくのか。スピーキング・テストを、実施すればするほど、そしてスコアを与えれば与えるほど自信をなくしてしまい、モチベーションにつながらない場合も多い。1コマで完結して、シンプルな評価規準で、生徒が比較的緊張せず、事前に個人練習はできるけれども、本番では即興的な「やり取り」の要素があって、そして生徒の学習意欲を高めるスピーキング・テストを行うにはどうしたらいいのだろうと考えました。
その結果⇒グループでのスピーキング・テストを福岡高校で始めたところ、意外にも生徒たちがとても楽しそうに話していて、「この形式のテストだったら楽しいので何度やってもいい」という生徒の感想も多く聞かれました。そこで、このテスト形式を継承して、不来方高校では初めて実施してみました。
<グループでのスピーキング・テスト(不来方高校)>
- あらかじめ(1週間前には)生徒たちに10から12ぐらいのトピックを与えておく
- 当日40人程の生徒を3~4人のグループに分ける
- warm upを2分間ぐらい与える
- 1つのセッションが3分間、長くても4分間ぐらい
まず、40~41人の生徒を4~3人のグループに分けて、2~3人(最低でも2人)の教員が同じ時間に評価をすることになります。そして、あらかじめ生徒たちには10から12ぐらいのトピックを与えておきます。一つのトピックにつき3分間、長くても4分間ぐらいとし、実施要項は、1週間前には生徒たちに配布しておきます。生徒たちにはそれぞれのトピックについて自分だったら何を言いたいかと各自で考えたり、1分間のスピーチを練習したりする期間を保証します。
グループ分けは当日のテスト開始前に行います。班員同士で挨拶した後にウォームアップのチャット時間を2分間程度与え、セッション1に入ります。10~12回のセッション毎に2名の教員がそれぞれ1つずつグループを回って生徒を評価します。トピックはセッション毎に与えますが、トピックリストの順番ではなくランダムに与えます。それは、教員が回ってくる前に特定の話題のみで練習してしまうのを回避するためです。ディスカッションテストと称していますが、まず高校入学後1回目ですので、お互いに会話を続けることを目標に、チャットの形で行ってみました。今後、後期に向けて徐々にハードルを上げていきます。