無垢の鳥居の先にある神社の小さな社殿に向かって歩く赤いコートを着た人の後ろ姿。白地に赤字で「さるめ神社」と書かれたのぼりが社殿を囲むように立っている。
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Ise City, British Council

約3年ぶりにアーティストの来日が実現

2019年10月、三重県伊勢市とブリティッシュ・カウンシルは、英国から6組のアーティストを招へいし、『伊勢市アーティスト・イン・レジデンス』を実施しました。約2週間にわたる滞在中、伊勢神宮をはじめとする名所を訪れて歴史や自然観への理解を深め、現地の表現者や地域の人々と交流するなかで、アーティスト活動につながるさまざまなインスピレーションを得ることができました。

それから3年以上を経た2023年1月、具体的な作品制作に臨むためにアーティストが再び伊勢の地を訪れ、インタビューや撮影、ワークショップなどを行いました。参加したのは、特に強い熱意を示した、マシュー・ロジア、ニコル・ビビアン・ワトソン、ジェーン・アンド・ルイーズ・ウィルソンの3組4名です。伊勢で得たインスピレーションを形にするべく、各自のテーマに沿った全く新たな作品づくりに挑みます。

再来日でさらに深まった“伊勢”への理解

3組のアーティストは全員が英国を拠点としていますが、才能を発揮するジャンルや活動の背景はそれぞれで異なります。今回の再来日も、同じ伊勢を舞台としながら、各アーティストの個性や関心が色濃く反映された滞在となりました。ここでは、伊勢での活動内容や作品プランの一部をご紹介します。

建築を学んだ背景から、“場所”が持つ性質をテーマとするインスタレーション作品を手掛けるマシュー・ロジアは、伊勢神宮の式年遷宮に注目。伊勢神宮や周辺の寺社、森林の撮影、伊勢の環境循環を支える技師や建築家などへのインタビューをもとに、式年遷宮に見る『持続可能性』のあり方を映像表現で探索します。

サーフェス・エリア・ダンス・シアターの芸術監督で、社会課題をパフォーマンスで表現してきたニコル・ビビアン・ワトソンは、身体で音を感じることができるウェアラブルデバイス『SubPac』を用いた体験を創造します。滞在中、聴覚に障害のある方たちとのワークショップも実施。インタビューや伊勢の音風景、伊勢音頭にインスピレーションを得た映像・音楽作品づくりに取り組みます。

1999年にインスタレーション作品『Gamma』でターナー賞候補となったジェーン・アンド・ルイーズ・ウィルソンは、写真や動画、映画の拡張形態でのインスタレーション作品を制作する双子のアーティスト・デュオ。伊勢での体験で得たインスピレーションから“人間性”を希求する映像作品を、伊勢神宮やそれを取り囲む豊かな森林、伊勢音頭の踊りなどを表現に取り入れて制作します。

英国内で各アーティストの作品を発表

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行と国際的な移動制限もあり、最初の訪問から3年以上の年月を経ての再来日。完成した作品は、2023年2月から3月にかけて英国内で初公開される予定です(一部オンラインで視聴可)。はたして、どんな作品が誕生するのでしょうか。有形無形の伊勢独自の文化が、英国のアーティストの目を通じてどのように表現されるのか、作品を体験した人々にどのような影響を与えていくのか、今後の展開に期待が高まります。

【伊勢市アーティスト・イン・レジデンス 2022-23】

主催:伊勢市
協力:British Council