世界にひろげるクリエイティブ・プロデューサーのネットワーク
Making the City Playable コンファレンス翌日の2018年9月29日(土)、日本と世界で活躍するクリエイティブ・プロデューサーのネットワーキング・フォーラムが開催された。
「クリエイティブ・プロデューサー ネットワーキング・フォーラム」は、国を越えてクリエイティブ・プロデューサーの役割と課題について語り合う、前日のPlayable City 2018コンファレンスの続編といえるもので、さまざまな分野で活躍する日本のクリエイティブ・プロデューサーも招き、アクティビティと対話をベースに進められた。
クリエイティブ・プロデューサーと一口にいっても、連想されるイメージは、人によってさまざまだ。最初のディスカッションでは、改めて「クリエイティブ・プロデューサーとは?」について考え、参加者たちそれぞれが思う「クリエイティブ・プロデューサー像」を出しあった。「ロビンフッド」「ドリーマー」「ネゴシエイター」「コネクター」「コミュニケーター」「ワイン醸造家」「破壊者」など、バラエティに富んだキーワードが飛び出し、多岐に渡るクリエイティブ・プロデューサーの役割を物語っていた。
ワークショップ「障害の社会モデルとアクセスを考える」では、障害のあるアーティストを支援する「アンリミテッド(Unlimited)」が開発したインクルージョンについて考えるカードを使ったゲームをした。イベントの種類、場所、バリアの3種のイラスト入りカードを組み合わせながら、グループでディスカッションし、イベントの企画を考えるというもの。だれもが参加できる場づくりの難しさと、他者の存在に思いをめぐらせる想像力の重要性について学んだ。
クリエイティブ・プロデューサーには、立場の異なる人々の意見を聞き、その間をつなぐ役割がある。アクティビティ「Yes, But」は、自分の意見とは関係なく楽観的と否定的、感情的の3つの立場に分かれて議論するロールプレイングゲームで、都市をもっとよくするアイデアについて話し合った。自分とは異なるキャラクターや意見を持った人の立場にたって考えてみることで、ひとつのものごとやアイデアを多様な視点から捉え検討するクリティカル・シンキングのトレーニングとなった。
さらに、ウォーターシェッドのアドバイザーによる貴重なレクチャーも行われた。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのサラ・エリス氏は、2016年に企業と協働で開発した最先端テクノロジーによる公演の事例を紹介し、企業とのコラボレーションを成功に導いたスキルとプロセス、そして劇場自体の存在価値を高めた革新的なチャレンジの意義について語った。
そして、ウォーターシェッドのアカデミック・パートナーである西イングランド大学の研究チームが行った、クリエイティブ・プログラムの効果測定と価値提示のレクチャーでは、経済的な指標だけでは評価しづらいクリエイティブ・プログラムを評価するための思考のステップが紹介され、クリエイティブな現場で常に課題とされる評価という問題について一緒に考える機会を得られた。
世界中で創造的な現場を作るプロデューサーたちが顔をあわせ、意見を交換しあった1日。この会で得られた気づきは、それぞれのクリエイティブな現場に持ち帰られて生かされていくだろう。ここで生まれた交流をきっかけにして、日本においても、クリエイティブ・プロデューサーの育成とネットワークの形成が始まることが期待される。