プレゼンテーションをするソフィー・サンプソンとトム・メトカーフ
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British Council Photo by Kenichi Aikawa 

9ヵ国の約30名のクリエイティブ事業関係者、多彩なゲストスピーカーが集まり、一般参加者と創造的で豊かな未来の都市のあり方を考える国際会議「Making the City Playable 2018」。その一プログラムとして、Playable City Tokyo 2018レジデンスに参加するソフィー・サンプソン/トム・メトカーフの二人の東京への滞在成果のプレゼンテーションが行われた。

それぞれの成果発表の前に解説されたのは、二人の活動の考え方に共通する3つの点について。「人が中心であること」「物理的空間を大切に考えること」「テクノロジーは人間の体験を補完するツールにすぎないこと」。体験ではなく、その体験から人が何を得られるかがもっとも大切と二人は語った。

ソフィー・サンプソン:「ケンケンパ」で探る東京の街と遊びのメソドロジー

東京のさまざまな遊び場を訪れたソフィー・サンプソンは、実践を通して東京という街と遊びと人々の関係を探るため、言葉を介さずとも誰もが瞬時に理解できる昔ながらの遊び「ケンケンパ」を用いた実験「Play Test」を決行。移動可能なケンケンパのボードを制作して東京各地で展開し、人々の反応を研究した。

東京で特に人のかたちをしたサインが多いことに気づいたソフィーは、日本人が何か人のかたちにしたものに対する特別な気持ちがあるのかもしれないと考え、人型が動くサインをつくり、さらにケンケンパの輪のかたちや言葉、矢印などをピカピカと点灯させ、人々に「ここで遊んでもいいよ」というサインを送った。それにより子どもから大人までが遊びに興じてくれた。

「人は遊びに対する安心感や承認を得られる環境があれば、より遊び心を発揮できる。日本人は真面目で控えめという印象があったけれど、実際は大人の遊び心はイギリス人よりも高い」とソフィー。東京での滞在を通して彼女がまとめた「公共空間における遊びに携わるものが常に自問すべき9つの問い」には、都市の違いを越えて、誰もが参加できる遊びの環境を考えるための有効なヒントが含まれている。

ワークショップ「最近もっとも自分が遊びに没頭できたときはどんなときでしたか?」では、誰といつどんな場所でなら、我を忘れて遊びに熱中することができたのか、参加者各々の体験を絵や言葉で表してもらった。「木登りをしたとき」「蝶を捕まえたとき」「コスプレ」「博物館」「フェスティバル」「好きな人とリラックス」など多彩なフィードバックが寄せられた。

地面に描かれた幾何学模様の横に人の姿が表示された小さなLEDスクリーン
ソフィー・サンプソンによる、アーツ千代田 3331での「Play Test」実施風景 ©

Sophie Sampson

マイクを手にスクリーンを指して話す人
ソフィー・サンプソン ©

British Council Photo by Kenichi Aikawa 

手書きの蝶々の絵
ワークショップでの質問「最近もっとも自分が遊びに没頭できたときはどんなときでしたか?」への解答 ©

 British Council Photo by Kenichi Aikawa 

植物が植えられた箱の横に立つ人
トム・メトカーフと《「和」の探求 一》のプロトタイプ ©

British Council Photo by Kenichi Aikawa 

トム・メトカーフ:プロトタイプ《「和」の探求 一》とウェルビーイングの可能性

以前から日本文化に興味があったトムは、東京でアーティストのスタジオや企業を訪れインタビューを行い、茶道や華道、日本庭園など日本の伝統文化を体験して、日本文化に見られる人間と自然、テクノロジーの関係性の融和を探求していった。そしてそのリサーチと体験から得たインスピレーションを、ひとつのプロトタイプで表現した。

アーツ千代田 3331のエントランスに展示された小さな箱庭のプロトタイプ《「和」の探求 一》。1立法メートルの植物を植えた箱庭の中に人工の気象を発生させ、そよ風が草や枝をそっと揺らしている。植物の動きを操るテクノロジー部分は隠れ、ただ草木が揺れる現象を五感で味わううちに、安らぎや心地よさが伝わってくる。

「自然の物質が持つ手触りや香りといった五感を通した体験は、プロジェクションマッピングやデジタルアートでは味わうことができない。さらにそこには幸福や心地よさといったウェルビーイングの可能性も含まれている」とトム。「遊びはポジティブな体験であり喜びであり、新しい場所へ導き人との出会いを供出し、人の幸福につながるものだ。このプロトタイプをより発展させ、実際に作品の中に観客が入って体験できるインタラクティブな庭を、2020年のオリンピックイヤーで完成・発表することが次の目標だ」と語った。

Playable City Tokyo 2018 レジデンスプログラムの成果プレゼンテーション

日付:2018年9月28日(金)
会場:ステーションコンファレンス 万世橋
スピーカー:ソフィー・サンプソン(Matheson Marcault)、トム・メトカーフ(Thomas Buchanan)
ファシリテーター:ヒラリー・オショネシー(Watershed)、ブルース池田(JKD Collective 株式会社)
主催:ブリティッシュ・カウンシル、ウォーターシェッド
共催:JKD Collective 株式会社
特別協力:ライゾマティクス・アーキテクチャー、東日本旅客鉄道株式会社
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京

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