東京の未来を見据えて
Playable City Tokyo 2018レジデンスは、アート、テクノロジー、社会の交差点で東京の公共空間にイノベーションをもたらすような遊び心あふれるアイデアを、日英のクリエイターの交流を通してリサーチし、発展させる機会だった。
継続中のPlayable City Tokyoプログラムを土台とするPlayable City Tokyoレジデンスは、英国から2名のクリエイターを招聘し、東京の公共空間をテーマに、創造的にテクノロジーを活用した遊び心あふれる新しい表現を創出することを目指したプログラム。Playable City Tokyoレジデンスには、81名の優秀な応募者の中から選ばれたソフィー・サンプソンとトム・メトカーフの2名が招聘された。
Playable City Tokyoは、都市空間のために独創的で新しいアイデアを生み出し、地域社会の人々に東京の未来を(特に2020年の東京オリンピックを見据えて)考えてもらうことを意図して2015年に立ち上げられた。2016年のPlayful Welcome Labの成功を足掛かりに、Playable City Tokyo 2018レジデンスは2015年に始まったこのプロジェクトを引き継いでいる。
2人のアーティストによる多様なアプローチ
今回のレジデンスプログラムの第1回目は2018年6月に実施され、東京のクリエイターに会い、東京都心の公共空間における体験を探求・リサーチし、コンセプトをつくるためのリサーチ滞在だった。そして第2回目は、2018年9月に東京での国際会議「Making the City Playable 2018コンファレンス」の出席者にアイデアを披露し意見を共有するプロトタイプ開発のための滞在。プロトタイプ製作ではパーベイシブ・メディア・スタジオ(Pervasive Media Studio)の協力を得て、なかでも主任クリエイティブ・テクノロジストであるデイヴィッド・ヘイロックとの共同作業が大きな助けになった。
東京での2回にわたるレジデンスにこうした素晴らしいアーティストを派遣できたことを、ウォーターシェッドとしては喜ばしく感じている。トムとソフィーという両アーティストが、拡大し続けるPlayable City Tokyoの仲間にとても興味深いさまざまな体験と好奇心をもたらしている。2人のアプローチが非常に多様だったため、2回の滞在を通じて互いに自分の作品を異なる視点で考え直すきっかけとなっていたのが特に印象的だった。
活気あるクリエイティブスペースの重要性
今回のレジデンスについては、ウォーターシェッドと両アーティストの双方が成功だったと考えている。国際プログラムを通じたわれわれの仕事は、ブリストルにおいて作品を他者に披露するだけに終わらず、世界のどこであれ、その場所の文脈に深く根ざしたコラボレーションや新たな作品につながる共通言語と持続的な関係を理解し構築することでもある。
今回のレジデンスプログラムでは、現在の東京における日本の生活と公共空間における遊びのコンセプトと実践を幅広く見つめ直すことから始まり、2人のクリエイターが英国に帰国した現在も続いている。作品の製作において重要なのは、滞在やリサーチを通じて場所とのつながりをつくること、また東京にいるアーティストやチェンジメーカーたちとの出会いや交流を通じて多様な地域社会との結びつきを築き育むことだ。今回のレジデンスプログラムでこうした関係づくりが円滑に実現したのは、東京の街と、地域社会とのつながりが感じられる、活気あふれるクリエイティブスペース、アーツ千代田 3331を活動の拠点としたことも大きな要因のひとつだろう。東京の街や文化に触れ、その場所や人とのつながりを生み、理解を深めながら新しいアイデアを創出しようとしたとき、地域に根ざした活気あふれるクリエイティブスペースが存在し、多様な人を迎え入れる体制が整っていることの意義を強く感じた。